ペーターズギャラリーコンペ2011 受賞者のお知らせ

今年もペーターズギャラリーコンペ2011にたくさんの作品が集まり、審査が無事終わりました。ご応募いただいた皆様ありがとうございます。 審査の結果をご報告します

テーマ 「人」。人物を題材にしたイラストレーション。
サイズ B3サイズまで。点数制限なし、画材自由。

審査員

鈴木成一(グラフィックデザイナー) 
長崎訓子(イラストレーター)
長嶋有(作家) 
服部一成(グラフィックデザイナー)  ※敬称略・五十音順

応募作品の中から各審査員が上位3名を選出し、賞を決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行ないます。(2012年2月)

応募人数  579名
応募作品数 1636点

審査結果

鈴木成一賞/小川清(東京都)   
長崎訓子賞/立澤香織(神奈川県)
長嶋有賞/米原薫(東京都) 
服部一成賞/加藤多央(東京都)

鈴木成一賞次点/佐伯ゆう子(東京都) 成瀬ノンノウ(東京都)
長崎訓子賞次点/谷端実(東京都) 辻恵(愛知県)
長嶋有賞次点/加藤麻依子(東京都) 細田すみか(東京都)
服部一成賞次点/堀田彩乃(東京都) 大沢浩一(福岡県)   ※敬称略

■審査を終えて各審査員の声と最終選考対象者

鈴木成一賞 小川清(おがわ・きよし)
何だろうこの絵は。見ていて、ジェネレーションギャップというのか、そんな言葉が出て来る。発想や絵にしたい動機がまるで解らない。
でも確実に何かを語っているし、画作りもすごくかっこいい。自分とはまったく違うところに日常があるんだろうな。新しいものを感じる。ショッキングでした。
   
鈴木成一賞次点  
佐伯ゆう子(さえき・ゆうこ)  
どうしてこういう絵を描こうとしたんだろう。二枚目の絵の表情なんてすごく気になる。今までちょっと見たことのない絵。日本の絵じゃないみたい。スタイルがはっきりしていて、例えば木陰あたりの執着ぶりが、絵にとても合っている。面白い。
   
成瀬ノンノウ(なるせ・のんのう)  
扇風機に巻き上げられちゃったか、すごいな。若い人なんだね。迫力があります。エッチさがある種の爽やかさになっていてよい。
   

鈴木成一さん総評

まだまだ原石がいっぱいある気がしました。見たことのない絵、知らない絵をたくさん見ることが出来てとても楽しかった。このコンペには多種多様な作品が集まってくる気がします。その多様性に圧倒されました。そんな中でも残ったのは、とくに純度の高い作品でした。今後も楽しみにしています。

鈴木成一最終選考者… 
星野勝之(埼玉県)、山本由実(東京都)、佐藤香苗(東京都)、加藤由紀(茨城県)、越井隆(東京都)、後藤美月(東京都)、多田景子(東京都)、名渡山彩子(東京都)、清水寿久(東京都)、君野可代子(神奈川県)、松倉香子(東京都)、相澤泉水(東京都)、正一(神奈川県)、安藤菜奈子(京都府)、西村オコ(大阪府)、辻恵(愛知県)、千海博美(埼玉県)、もとき理川(東京都)、日端奈奈子(神奈川県)

鈴木さんの審査のながれ 一次審査→二次審査→最終選考


 
長崎訓子賞 立澤香織(たつざわ・かおり)
 
応募された作品のなかで一番『2011年の女の子』が描けていました。他にも女の子の絵を描く人がたくさんいたけれども、こういったものは、時代感がないとつまらないと私は思っているので、そういう意味でタツザワさんの絵を選びました。2012年になるとどうなるか解らないような世界なので、時代に敏感にガンガン反応して行ってほしいです。旬のもので終わらずに続けていってもらえれば、選んだ甲斐があるかな。(笑)
表現が出来上がってきている印象もあるので、今後はモチーフ選びなどでもっと冒険してほしい。壊していくことも大事です。
   
長崎訓子賞次点  
谷端実(たにばた・みのる)  
この人の絵はよく解らないと思いながらも、面白そうだったので最後まで残った…という感じです。(笑)悪意と得体の知れなさがぎりぎりのところで抑えられていて、そのバランスが気に入りました。
   
辻恵(つじ・めぐみ)  
すごく上手だし、空間がさらりと気持ち良かったので選びました。ただ、そろそろ表現が出来上がってきている印象もあるので、今後はモチーフ選びなどでもっと冒険してほしい。壊していくことも大事です。
   

長崎訓子さんの総評

『人』というのはよいテーマだと思いました。人を描くことは、実はとてもむずかしいので、力量の差が明確に出るからです。興味深い作品がたくさんありましたが、顔がきちんと描けていない人も多かったことが(私が言うなって感じですが。笑)残念でした。人物写真をそのまま描いているような人も多かった。見たものをそのまま写して描いている時点では、まだイラストレーションとは言えません。そういう人たちに共通しているのは、モチーフに委ね過ぎていて自分の世界観や伝えたいことがまったく見えてこないところです。また、作品としてとても魅力があっても、テーマから少しずれている作品も今回は除外しました。そういう意味で『人』を怖がらずに、しっかりと対峙している作品を選びました。

長崎訓子最終選考者… 
成瀬ノンノウ(東京都)、福井勝敏(東京都)、三好愛(東京都)、黒崎威一郎(栃木県)、サトウあこ(東京都)、峯岸圭(東京都)、ひぐちまさこ(東京都)、毛塚隼人(東京都)、名渡山彩子(東京都)、鈴木さや香(東京都)、大竹雄亮(東京都)、ミヤザキコウヘイ(東京都)、繍緻群羊良(広島県)、松原奈美(東京都)、渡辺めぐみ(東京都)、筧菜奈子(京都府)、望月文代(静岡県)、園田源二郎(滋賀県)、藤岡詩織(神奈川県) (

長崎さん審査のながれ 一次審査→最終選考

 
長嶋有賞 米原薫(よねはら・かおる)
 
忍者と水泳帽だ!タイトル見なくても、絵を見てすぐわかりました。この作品は記号ではなくて、きちんとデザインになっている。上手いイラストを描く人はたくさんいるけれど、あるところから先は上手さじゃないような気がする。イラストレーションは絵画と違うので、こういうけれん味も大切。似たモチーフばかりが続く応募作品のなかで取り分け新鮮に映りました。
   
長嶋有賞次点  
加藤麻依子(かとう・まいこ)  
カップラーメンのふたがいいですね。食べ物が美味しそうでした。
   
細田すみか(ほそだ・すみか)  
エコバッグの絵のタイトルが二子玉川か。表参道の方もいいね。ネーミングのセンスがいい。応募作品中、ソフトクリームがたくさん描かれていたなかで、擬人化がよかった。
   

長嶋有さんの総評

僕はイラストレーションについては素人だと思っているので、例えばパースが狂っているとか色がおかしいといった、絵の巧拙の話になってくるとよくわからない。 そういう視点での判断は他の審査員に委ねます。  巧拙と関係なく、絵のどこかに「これは」と思うところが一点あれば、僕にはそれだけで意味がある気がする。 人が描いていないものを敢えて描いたり、同じモチーフでも切り取り方が新鮮だったり、一瞬で心が掴まれるかどうかっていうところが大切なことの一つと思います。  それって素人の目線じゃないかと言われてしまうかもしれないけれど、逆に言えば、素人審査を巧拙でだますことが出来なかった人は残らなかった。 とにかく、まだ世の中にないものを描いている人か、描こうとしている人のそれは分かるし、気になる。 案外、応募作のモチーフが古いな、とも。 いまだに白いワンピースとハイヒールの絵ばかりで驚いた。 歯を出して笑う人や、数枚描いているうちの一人は和服とか、いかにもそこらのオッサンとか、応募作同士でかぶりまくって。 オリジナリティやバラエティを出しているつもりが、全然凡庸な発想かもしれないってことを、もっと疑った方がいい。  奈良美智さんや鴻池朋子さん束芋さんのように、アートの世界で評価されつつ、本の装画や挿絵にも使われるような作品 を作る人も出て来ている。 漫画家の絵も同 様で、今はイラストレーションと、 アートや漫画、アニメーションのボーダーがなくなってきている。 どんな意識でもどんなつもりでも、世になにかを問いかけるチャンスは広がっていると思う。

長嶋有最終選考者… 
オオマエメグミ(東京都)、たなかたかこ(神奈川県)、サトウあこ(東京都)、加藤由紀(茨城県)、kalo(東京都)、佐々木麻弥(埼玉県)、佐藤じゅんいち(東京都)、斉藤涼平(神奈川県)、山ア若菜(千葉県)、後藤美月(東京都)、北原明日香(東京都)、さとうまもる(東京都)、石山さやか(東京都)、彦坂有紀(神奈川県)、田口ヒロミ(兵庫県)、大津有加里(東京都)、奥見伊代(兵庫県)、前田登志春(大阪府)、渡部紘巳(鳥取県)、おちあやこ(東京都)、安藤菜奈子(京都府)、森由香里(東京都)、岡本真弓(東京都)、池之上真由(兵庫県)、小林あつ子(埼玉県)、小林文明(神奈川県)、辻恵(愛知県)、加藤正臣(埼玉県)、石塚堅太(大阪府)、たなかみか(大阪府)、寺井美希(兵庫県) (

長嶋さん審査のながれ 一次審査→最終選考

 
服部一成賞 加藤多央(かとう・たお)
 
こういう、女の子の身近な生態を描くような絵っていっぱいあったと思います。そのなかでこの絵には新鮮さがありました。特に縦位置のほうの絵がよかった。上手い絵には見えないけど、原色や黒のハッキリした色を、バランスよくまとめている。ポーズもいい。ばかばかしいようなあっけらかんとした大胆さと、ベトっとした内面性が同居していて良かった。
   
服部一成賞次点  
堀田彩乃(ほった・あやの)  
異色でしたけれど、とくにこのすいかアタマの人の絵が面白いなと思いました。色もきれい。絵の着想もいいし、表情がいいと思います。細かいフォルムもいちいちきれいですね。手法としてはクラシックな版画という印象ですが、予定調和でつまらなくなりそうなところを、正面から突破してると思います。 最近のイラストレーションの傾向と全然違うと思いますけど、独特でよいと思います。
   
大沢浩一(おおさわ・こういち)  
独特でいいですね。この人は前に『イラストレーション』誌のchoiceの審査でも選んだんですが、また少し変化があってよかったです。 画材の性質をうまく活かしていて、マジックひとつでこれだけのきれいなマチエールや線を出せている。今回コンペのテーマが「人」で、人らしきものを描いてはいるけれど、この人の場合、本当の興味は形とか色にあると思う。なのでちょっと今回の賞をあげるのは躊躇しました。でもすごく独創的でよいと思います。
   
 

服部一成さん総評

全体で見ると、いくつかの傾向のなかで、似た画風が多かったと思います。ある程度仕方ないことだとは思うんですが。みんな、どういう描きかたをしたら雰囲気よく見えるか、ということばかり気にしていて、その結果、見たことのある画風に近寄ってしまっていると思います。「どう描くか」も大切ですが、こういうコンペの場合は自分で自由に考えて描くことが出来るわけだから、「何を描くか」というテーマをもっと意識してほしいと思いました。人間を描くというのは、難しいものだと思いますが、意外にうまく、面白く描いている人が多くて、その点は感心しました。

服部一成最終選考者… 
大和久真穂(東京都)、峯岸圭(東京都)、ひぐちまさこ(東京都)、正一(神奈川県)、内柴秀一(東京都)、はやしまよ(愛知県)、小笠原徹(東京都)  (

服部さん審査のながれ 一次審査→最終選考

PATER'S Gallery COMPETITION 2011年度受賞者展
2012
年2月10日(金)〜2月22日(水)開催予定
ペーターズギャラリー 12時〜19時 木曜休み

受賞作品の展示と、各審査員賞に選ばれた4名はあらたに描き下ろした作品も展示します。




© nakagawa takao

ペーターズギャラリーコンペ2011 作品募集要項

審査員 鈴木成一(グラフィックデザイナー)
長崎訓子(イラストレーター)
長嶋有(作家)
服部一成(グラフィックデザイナー)
※五十音順・敬称略
応募作品の中から4人の審査員が各々上位3名を選出し、賞を決定。 受賞者による作品展を当ギャラリーにて行ないます。(2012年2月中旬予定)
受付期間 2011年6月4日(土)〜6月15日(水)12:00〜19:00 木曜定休
※入賞者には7月10日までにご連絡します。
テーマ テーマは「人」。人物を多く描いたイラストレーター・ペーター佐藤にちなんで、人物を題材にしたイラストレーションを募集します。
作品サイズ等 B3サイズ以下。 画材自由。 点数制限はありません。
※立体・半立体作品は保管の都合上写真等でご応募下さい。
※折曲がりやすい作品は厚紙などの台紙に貼り、傷つきやすい作品の表面は透明のフィルム(アセテートフィルム等)をかけてください。 トレペ不可。 額装不可。
出品料

2点まで3,000円、3点目からは1点につき1,000円 (例:5点応募の場合、計6,000円)、郵送搬入の方は無記名の「定額小為替証書」もしくは「普通為替」(どちらも郵便局で購入可能)で作品と共にお送りください。
直接搬入の方はギャラリー受付にて現金でお支払い下さい。
※応募者の都合による出品料の返金は致しません。

応募方法

応募票をプリントして必要事項を記入し、応募票は出品料、作品とともに提出してください。
また各作品の裏面にも応募票のコピーを貼付してください。
※手書き可。

搬入搬出 上記の受付期間中に作品、ペーターズギャラリーに直接搬入または搬送して下さい。
郵送返却の方は返送先を記入した「着払い宅配伝票貼付の返送用封筒」または「切手貼付の返送用封筒」を同封して下さい。
直接搬出の方は7月15日〜7月31日(12:00〜19:00/木定休)の間に取りに来てください。
※搬出期間を過ぎた作品はお預かりできません。搬出日に来られない方は必ずご連絡ください。
※作品の扱いには十分気をつけますが、万一破損・紛失した場合はご容赦願います。 
応募先/お問合せ ペーターズショップ アンド ギャラリー
〒150-0001東京都渋谷区神宮前2-31-18
12:00〜19:00/木曜定休(ただし受付期間中の木曜日はオープン) 
Tel:03(3475)4947
Fax:03(3408)5127
mail:patersato@paters.co.jp
応募用紙はコチラをプリントアウトしてご利用ください。

■審査員プロフィール

鈴木成一(すずき・せいいち)

グラフィックデザイナー。
1962年北海道生まれ。筑波大学芸術研究科修士課程中退後、1985年よりフリーに。
1992年(有)鈴木成一デザイン室設立。1994年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。
エディトリアルデザインを主として現在に至る。
胸ときめくようなイラストレーションを希望します。

 
長崎訓子(ながさき・くにこ)

イラストレーター。
1970年東京生まれ。多摩美術大学染織デザイン科卒業後、フリーのイラストレーターとして、雑誌、書籍 、児童書、広告など多方面に活躍中。代表的な装画に「金持ち父さん貧 乏父さん(筑摩書房)」、「武士道シックスティーン(文藝春秋)」など。
http://www.platinum-s.com
強気な作品を期待しています。

 
長嶋有(ながしま・ゆう) 作家。
1972年生まれ。2002年『猛スピードで母は』で芥川賞、2007年『夕子ちゃんの近道』で大江賞を受賞。
公式サイト http://www.n-yu.com/
絵は素人なので、技術や巧拙をみることはできないかもしれませんが、面白さや気の抜け方、ふざけ方や真面目さを感じとれたらいいなと思います。
 
服部一成(はっとり・かずなり) グラフィックデザイナー。
1964年東京生まれ。1988年東京芸術大学美術学部デザイン科卒。ライトパブリシテイを経て、01年よりフリーランス。おもな仕事:『キユーピーハーフ』の広告。雑誌『流行通信』、『here and there』、『真夜中』のアートディレクション。金沢21世紀美術館『ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー』展のグラフィック。『三菱一号館美術館』のロゴデザイン。旺文社『プチ・ロワイヤル仏和辞典』のブックデザインなど。


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