ペーターズギャラリーコンペ2019 受賞者のお知らせ

ペーターズギャラリーコンペ2019にご応募頂いた皆様ありがとうございました。
審査の結果をご報告します。

テーマ「人」。人物を題材にしたイラストレーション。
サイズ B3サイズまで。点数制限なし、画材自由。

審査員

上田三根子(イラストレーター)
木内達朗(イラストレーター)
鈴木成一(グラフィックデザイナー)
藤田知子(グラフィックデザイナー)
【敬称略・五十音順】

応募作品の中から各審査員が上位3名を選出し、賞を決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行ないます。(2020年2月)

応募人数  382名
応募作品数 1239点

審査結果

上田三根子賞/石松チ明(愛知県)
木内達朗賞/沖野愛(愛媛県)
鈴木成一賞/三谷柚衣(神奈川県)
藤田知子賞/石松チ明(愛知県)
上田三根子賞次点/小山萌江(埼玉県) 頼ユウコ(東京都)
木内達朗賞次点/菅かおる(京都府) ミヨシ(東京都)
鈴木成一賞次点/namoyono(京都府) 田澤ウー(神奈川県)
藤田知子賞次点/にいじまみわ(埼玉県) 諸星朋子(東京都)

※敬称略

■審査を終えて各審査員の声と最終選考対象者

上田三根子賞 石松チ明(いしまつ・ちあき)
きれいな線が印象的でした。 アップの作品も細かいところまで描いた作品も、どちらも良かったです。 石松さん独自の世界観がおもしろく、イラストレーションを見ていると 何か物語が浮かんでくるようでした。
   
上田三根子賞次点  
小山萌江(こやま・もえ)  
TIS展での、力強いイラストレーションが記憶に新しい小山さんの作品。 人間(?)の顔を描いたものを見るのは初めてでしたが、何を描いても 小山ワールド全開!いい感じに進化していると思います。
   
頼ユウコ(らい・ゆうこ)  
欠点もありますが、それを覆してしまう色のセンスの良さは抜群です。 イラストレーションの中の人たちの楽しいお喋りか聞こえてきそう。 今の空気をまとっている、イラストレーションだと思います。
   

上田三根子さん総評

たくさんの応募ありがとうございました。 とても見応えのある作品ぞろいで楽しい審査でした。 最終審査に残った方の作品たちは甲乙つけがたく いちばんの悩みどころでした。 その中からの3人の方の受賞作品は 自分の描きたいものが、きちんとわかっている。 人に見られることを意識して描いている。 イラストレーションの可能性を秘めている。 ってことが、他の方よりちょっとだけ抜きん出ていたように思います。 受賞作品の展示楽しみにしています。

上田三根子さん最終選考
最終選考者…春山拓思(千葉県)、松枝美枝、櫻井万里明、ヤギエツコ(東京都)、やまもとようこ、田澤ウー(神奈川県)、macco(京都府)

(上田三根子さんの審査のながれ 一次審査→最終選考)


 
木内達朗賞 沖野愛(おきの・あい)
 

絵としては一点ですが、十点見たのと同じくらいの密度がありました。クラフトマンシップに心を打たれました。 空間としては辻褄が合うように繋がっていないようなので、これはどんどん増殖させる形で描き足していったのでしょうか。 どこを見ても楽しく見どころ満載でした。ただ、人物がみな同じ笑顔なので、違う感情や行動のバリエーションがあるともっと良いかもしれません。

   
木内達朗賞次点  
菅かおる(すが・かおる)  
 
一点しか出品されていませんでしたが、選ぶことに不安はありませんでした。色も構図もセンスも素晴らしいと思います。 余計なお世話ですが、一つ申し上げることがあるとすれば、雲梯のパイプがもう一回り細いとメリハリがあって良かったかと思います。版画は線が太くなりがちなのでなおさら。
   
ミヨシ(みよし)  
応募された絵は人というテーマで描かれたものではないように思いましたが、良い絵だったので選ばずにはいられませんでした。 タッチや画材の使い方もかなり研究しているように見えました。ということで、真正面から人をテーマに取り組んだ絵も見たいです。
   

木内達朗さん総評


普段ネットでデジタルの画像、手描きの絵にしてもデータ化されているという意味でデジタル画像なので、 そういうものに慣れているせいか、これだけ大量に「原画」を見るのは新鮮な体験でした。 日本のイラストレーションの現場は外国に比べて手描きで制作している割合がまだ多いのではないかと思います。 アメリカの年鑑などを見るとわかりますが、ほとんどがデジタル作品です。 それが良いかどうかは別として、原画を見るのと、モニタでデータを見るのとでは選ぶ作品が変わってくるかもしれないと思った次第です。 突出したものは見つからなかったものの、全体的に良い作品が多かったと思います。 次のような基準で、そういうものが見て取れる作品を選びました。 ・人の絵に限らずいろいろなものを見てよく勉強しているか、影響を受けたものが目に見える形で現れているかどうか。単に誰かの真似をすればいいという意味ではないですが、元ネタはあって然るべきと思います。美術史やデザイン史(だけではないですが)をふまえた上で制作することは大事です。 ・画材の使い方などを研究し、どこかに独自のこだわりを持って描いているかどうか。 ・普段青山塾で受講生の絵をたくさん見ていると、これは凄い、自分には描けないと思える絵にたくさん出会います。そういう点があるかどうか。僕自身は仕事で描いているので、コンスタントに一定レベルをクリアする絵を描き続けなければならないため、安定はしても無難にまとまりがちです。コンペに出品される絵は部分的にでもそこを超えて欲しいです。

木内達朗さん最終選考
最終選考者…野崎珠央(北海道)、佐藤英行、前田なんとか、にいじまみわ、出口瀬久(埼玉県)、なぎ風子、原田俊二(千葉県)、輪島谷早穂、川崎真奈、袴田章子、紙谷俊平、古川じゅんこ、出口えり、渡辺一美、すぎもりえり、橋本裕子、太田麻衣子、藤安初枝、大島弓枝、安川ユキ子、渡辺晶子、櫻井万里明、山口ともこ(東京都)、横山千裕、こうのかなえ、ミナリースク、梅津彩、小牧真子(神奈川県)、土屋未久(愛知県)マカフェルト工房(兵庫県)、早川靖子、macco(京都府)、渡邉美里(岡山県)、難波瑞穂(福岡県)、なかむらなおし(高知県)銀杏早苗(広島県)、坪田朋子(沖縄県)

(木内達朗さん審査のながれ 一次審査→最終選考)

 
鈴木成一賞 三谷柚衣(みたに・ゆい)
20歳の三谷さんの作品は、今回の私の総評を悉く、しかも見事にあっけなく打ち砕くような、実に健康的で屈託のない、開放感に満ちあふれ て、見る者を惹きつけるどころか、ぐいぐい引っ張る漲る力を感じます。 若者はこうでなくっちゃ、などとオヤジなんかに言われたくないだろうけど、時代が時代であるだけに救われる思いです。言わずもがなですが、受賞者展では気負うことなく思いっきり遊んじゃって下さい。楽しみにしております。
   
鈴木成一次点  
namoyono(なのもよ)  
パソコンで描いたようなのですが、ひとつの発明と言っていいほどの新鮮なイメージです。地となっている白の、これほど白い「白」は他にな いのではないでしょうか。勿論図の黒との対比でもあるのでしょう、白の張力のある稠密な物質感は瞠目です。想像力を強く刺激されます。
   
田澤ウー(たざわ・うー)  
これまで売り込み等で田澤さんの絵は長らく見てきましたが、人物の キャラの強さが魅力であるのと同時に、一方で限定的な印象を抱いてもいました(すみません)。今回の作品は段ボールを貼り合わせる技法も 相俟って、一気に世界が広がったように思います。
   

鈴木成一さん総評

毎回膨大な数のイラストから選考するため、自ずとその見るスピード は上がります。そんな中、今回は特段引っかかって立ち止まらせるものが多数散見されました。専門学校等の組織的な応募のせいなのか、そのほとんどが 20 歳前後の応募者によるものです。勿論新しい才能の発見 として目を止めこそすれ、あくまでそれは稀で、大体はその異質性であり、違和感でした。 漠然とはいえ絵を成り立たせる何らかの根拠があって、前提としての 共通感覚上に「見る」「見られる」が成立して、少なくともこの了解の なかでの選考となるのですが、彼らの絵はハナからそれを無視するような、無関心であるようなふるまいです。そこには単なる世代間のギャップとは言い切れない、埋めようのない断絶すらみてとれます。そういう彼らの絵を見て思うのは、取り付く島のないバラバラな個に よるバラバラな価値観です。残念ながら、それらはやや自家中毒気味で、いずれもやりきれない閉塞感を漂わせています。このコンペに対し、トレンド(死語ですね)を見出すつもりも、全部がそうというわけでも勿 論ないのですが、こんなにも若者は無造作に、しかも孤独に社会に放置 されているのか、と心配にすらなりました。このコンペの一審査員としてできることはあまりにわずかですが、向 かうべき方向や目標、そもそも絵は人を楽しくさせ、解放してくれる何かしらであることを示して行きたいと、この11回目の審査にして非力ながら強く思った次第です。

鈴木成一さん最終選考
最終選考者…徐徳天(茨城県)、鐘ヶ江万里、出口瀬々(埼玉県)、yohnin(千葉県)大場ケンイチ、桔川伸、安川ユキ子、諸星朋子(東京都)、田辺結佳、こうのかなえ、佐藤野々子、橋村実里(神奈川県)、三宅崇之(愛知県)、南景太(岐阜県)、石原一博(大阪府)

(鈴木成一さん審査のながれ 一次審査→最終選考)


 
藤田知子賞 石松チ明(いしまつ・ちあき)
 
人が魅力的、デジタルのようで実はアナログという意外性、モノクロとカラー/繊細さと大胆さのバランスが絶妙、不思議さの漂う独特の雰囲気を持っている、黒ベタ部分の描き分けやラインひとつひとつの丁寧さ、エロティックだがそこに焦点を当てさせない絵全体の力、ボードのフチにまで絵を描いている芸の細かさ、展示で映えそう…などの理由から、グランプリに選ばせていただきました。
   
藤田知子賞次点  
にいじまみわ(にいじま・みわ)  
どこかノスタルジックであり、物語の中のワンシーンのようでもあります。装丁の仕事をしているせいか、このような物語性のある絵に惹かれます。トーンは抑えめですが透明感のある色遣いが心地よいです。人物が絵の中でさりげなく映えるような描き方をしていて、“人”というテーマに親和していますね。
   
諸星朋子(もろほし・ともこ)  
シーチングにアクリルガッシュという画法と、描かれているものとの相性がとても良いです。布のテクスチャーや絵の具の滲みが邪魔しない程度にシンプルに描かれていて、その過不足のないバランスにセンスを感じました。人物の顔にも魅力があります。失敗できない描き方だと思うのですが、安定感のある筆運びが気持ちいいです。
   
 
藤田知子さん総評

1200点以上の絵を見て、その中からたった3名の受賞作品を選ぶ作業は、とても悩ましく難しいものでした。二次選考辺りまでは深く悩まず選ぶことができたのですが、15名くらいに絞った段階で、さてどうしようと。あらためて自分がどういう基準で選ぶのかを突きつめる必要があり、残った作品を並べてじっくり向き合って考えました。@“人”というテーマに即していること、A安定したクオリティーで作品を描けていること、B私らしい選考かどうか、その3つが大きな判断材料になりました。Aについて言うと、とても気になる作品だけれど1点のみの応募というところで、判断がつかず選外にしたものもあります。グランプリに限っては、展示のための描き下ろし作品への期待値も決め手でした。最終選考に残った作品は、どれが受賞してもおかしくなかったので、自信を持って欲しいと思います。全体を通しての感想ですが、初めて出会うイラストレーターの作品が多く、新鮮さを感じました。デジタル制作の作品が多いように感じましたが、その中で、ぱっと見はデジタルのように見えるのに、実はアナログであるという作品には、逆に面白さを感じました。イラストレーションとひとくちで言っても様々な手法や表現があり、沢山の作品を一気に見ることで、あらためてその豊かさに心が躍りました。貴重な機会をくださったペーターズギャラリーの皆様には、深くお礼を申し上げます。ありがとうございました。

藤田知子さん最終選考
高倉愛、出口瀬々(埼玉県)、原田俊二(千葉県)、古川じゅんこ、渡辺一美(東京都)、三谷柚衣(神奈川県)、なかむらなおし(高知県)、花村信子(山口県)

(藤田知子さん審査のながれ 一次審査→最終選考)


PATER'S Gallery COMPETITION 2019年度受賞者展
2020年2月7日(金) 〜2月19日(水) 開催予定
ペーターズギャラリー 12:00〜19:00 木曜日定休
受賞作品の展示と、各審査員賞に選ばれた3名はあら たに描き下ろした作品も展示します。



© Ao Aoi

ペーターズギャラリーコンペ2019 作品募集要項

審査員

上田三根子(イラストレーター)
木内達朗(イラストレーター)
鈴木成一(グラフィックデザイナー)
藤田知子(グラフィックデザイナー)
【敬称略・五十音順】

応募作品の中から4人の審査員が各々上位3名を選出し、賞を決定。 受賞者による作品展を当ギャラリーにて行います。(2020年2月中旬予定)
受付期間 2019年6月8日(土)〜6月19日(水)12:00〜19:00 木曜定休
※入賞者には7月11日までにご連絡します。
テーマ テーマ「人」。人物を多く描いたイラストレーター・ペーター佐藤にちなんで、人物を題材にしたイラストレーションを募集します。
作品サイズ等 B3サイズ以下。画材自由。点数制限なし。
立体・半立体作品は保管の都合上、写真等でご応募下さい。
※必ず作品の表面に透明のフィルム(アセテートフィルム等)をかけてください。トレペ不可。額装不可。折曲がりやすい作品は厚紙などの台紙に貼って下さい。
出品料

2点まで3,000円、3点目からは1点につき1,000円(例:5点応募の場合、計6,000円)、郵送搬入の方は無記名の定額小為替証書もしくは普通為替(郵便局で購入可能)で作品と共にお送りください。
直接搬入の方はギャラリー受付にて現金でお支払いください。
※応募者の都合による出品料の返金は致しません。

応募方法 応募票に必要事項を記入し、応募票は出品料、作品とともに提出してください。
また、各作品の裏面にも応募票のコピーを貼付してください。応募票はペーターズHPでダウンロードできます。※応募票はコピー可。手書き可。
搬入搬出 上記の受付期間中に作品を、ペーターズギャラリーに直接搬入または搬送して下さい。郵送返却の方は返送先を記入した「着払い宅配伝票貼付の返送用封筒」または「切手貼付の返送用封筒」を同封して下さい。 直接搬出の方は7月20日〜7月31日(12:00〜19:00/木定休) の間に取りに来てください。
※搬出期間を過ぎた作品はお預かりできません。 搬出日に来られない方は必ずご連絡ください。
※作品の扱いには十分気をつけますが、万一破損・紛失した場合はご容赦願います。
応募先/お問合せ ペーターズショップ アンド ギャラリー
〒150-0001東京都渋谷区神宮前2-31-18
12:00〜19:00
Tel:03(3475)4947
Fax:03(3408)5127
mail:patersato@paters.co.jp
12:00〜19:00/木曜定休
応募用紙はコチラをプリントアウトしてご利用ください。

■審査員プロフィール

上田三根子(イラストレーター)

セツ・モードセミナー在学中からイラストレーションの仕事を始める。
明るくポップな画風とオシャレなセンスは人気が高く 広告、雑誌、装幀、絵本など、大人向けから子供向けまで幅広い分野で活躍中。
LION「キレイキレイ」キャラクターデザイン/SONYプレイステーション「ぼくのなつやすみ」シリーズキャラクターデザイン/ 秋田書店「フォアミセス」表紙/実業之日本社「オートキャンプ場ガイド」表紙/PHP研究所「PHPくらしラク〜る♪」表紙など。

「応募は1点より何点か出していただいた方が、作品の良いところも見つけやすくなります。 どんな新しい人物像に会えるか楽しみにしています。たくさんの応募をお待ちしています。」

 
木内達朗(イラストレーター)

1966年東京生まれ。国際基督教大学教養学部生物科卒業。アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン、イラストレーション科卒業。イギリス・ロイヤルメールのクリスマス切手、世界中の店舗にて展開されたスターバックス・ホリデーキャンペーン、ニューヨーク・タイムズ、ワシントンポストなどのイラストレーションを手がける。書籍装画、絵本など多数。ブラティスラヴァ世界絵本原画展、ボローニャ国際絵本原画展入選。イラストレーション青山塾講師。

「グローバルに通用する作品をお待ちしてます。もちろんローカルに親しまれる作品もウェルカムです!」

 
鈴木成一(グラフィックデザイナー)

1962年北海道生まれ。筑波大学芸術研究科修士課程中退後、1985年よりフリーに。1992年(有)鈴木成一デザイン室設立。 1994年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。エディトリアルデザインを主として現在に至る。「鈴木成一装丁イラストレーション塾」講師。 筑波大学人間総合科学研究科非常勤講師。 著書に『装丁を語る。』『デザイン室』(いずれもイースト・プレス刊)、『デザインの手本』(グラフィック社)。

「あたらしい才能の発見が楽しみです。」

 
藤田知子(グラフィックデザイナー)

山口県下関市出身。グラフィックデザイナー。書籍のデザインを中心に活動。桑沢デザイン研究所U部在籍中から昼間はデザイン事務所で働き始め、卒業後、坂川事務所に就職。2004年に独立。2015〜2017年、ギャラリーダズルにて、『実践装画塾』の講師をつとめた。2018年から同ギャラリーにて、『海外文学装画ワークショップ』を主宰。

「たくさんの魅力的な絵との出会いを楽しみにしています!」



■ ペーターズギャラリーコンペ受賞者を訪ねて
過去のコンペ受賞者の活動をご紹介しています。

 
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