ペーターズギャラリーコンペ2014 受賞者のお知らせ

ペーターズギャラリーコンペ2014にご応募頂いた皆様 ありがとうございました。
審査の結果をご報告します。

テーマ「人」。人物を題材にしたイラストレーショ ン。
サイズ B3サイズまで。点数制限なし、画材自由。

審査員

網中いづる(イラストレーター)
鈴木成一(グラフィックデザイナー)
長友啓典(アートディレクター.)
水野健一郎(アーティスト)
※敬称略・五十音順

応募作品の中から各審査員が上位3名を選出し、賞を決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行ないます。 (2015年2月)

応募人数  419名
応募作品数 1503点

審査結果

網中いづる賞/後藤美月(東京都)
鈴木成一賞/千海博美(埼玉県)
長友啓典賞/大坪聖香(千葉県)
水野健一郎賞/立山柚子(神奈川県)

網中いづる賞次点/荻原朋弥(東京都) 早川世詩男(東京都)
鈴木成一賞次点/田中直朱(東京都) まるやまあさみ(東京都)
長友啓典賞次点/ハセガワマホ(埼玉県)坂西育美(東京都)
水野健一郎賞次点/瓜生太郎(東京都) 大場ケンイチ(東京都)

■審査を終えて各審査員の声と最終選考対象者

網中いづる賞 後藤美月(ごとう・みづき)
すでに絵本や書籍のお仕事でたくさん活躍されていて上手なひとです。
後藤さんの描く思いきりのよいシャキンとペチャンとした形が面白く、 普通のものが後藤さんの手でちょっと普通じゃないふうになっています。
ポカンと空いた空間も何気ないようで考えられています。
子どもの作った絵のように見せかけて、実はずるいです。
「あぁ、悔しいなぁ。可愛いし。」と言いながら最後まで眺めていました。
   
網中いづる賞次点  
荻原朋弥(おぎわら・ともみ)  
なんといっても目を引くのは、独特な美しい色彩と画面いっぱいに切り取られた人物中心の構図でしょうか。モニャモニャした色合いに溶け込んだ女の子の顔はどれも不安げで(アンニュイというのでしょうか)、美人です。この女の子たちが動き出して生き生きとする絵も見てみたいと思いました。
   
早川世詩男(はやかわ・よしお)  
動きのある大きな作品に心奪われました。青春ですか!青春ですね!
これは懐かしいのか、新しいのか、たぶん両方なんですけど、 絵に風が吹いていて爽やかできゅんとしました。
タイトルの「潮風通り」なんて狙ってますけど、センスよくて大好きです。
   

網中いづるさん総評

審査ではまず100人近くに絞り、だんだんと二次三次と進んでいくのですが、ものすごく迷ってしまい大変でした。出会って「わぁ!好きだな」と思えたら、という感じでしたが、好きな絵が多すぎました。タイトルを見てから作品を見るとまた印象が違うし、ペンネームを復唱してみたり年齢や職業に感心したり、作者を想像して、迷いつつも楽しい時間でした。別のコンペの審査でも感じることですが、絵の流行もゆるやかに変化しているようです。「おしゃれコミックふう」「細い線描き描き系」「昭和なつかし系」など勝手に(愛情を持って)こっそり名付けていました。ごめんなさい。最後まで選ぶのに悩みましたが、3人の作品画像をあらためて見るとやっぱり素敵です。素晴らしい絵に会えて嬉しいです。

網中いづるさん最終選考 最終選考者…
玉川桜、長田結花、山口法子(以上東京都)、正一、みょんこ、町田ひろみ、にがたごしゆか、中村みしゅまろ、谷口ちなみ(以上神奈川県)、千海博美(埼玉県)、和田彩(茨城県)

(網中さんの審査のながれ 一次審査→二次審査→最終選考)

 
鈴木成一賞 千海博美(ちかい・ひろみ)
 
ひとつの完成形ではないでしょうか。形、色、技法のそれぞれが見事に一体となって迫るものがあります。千海さんの過去作品に比べて、特に色彩がもたらすライブ感が新鮮でした。
   
鈴木成一賞次点  
田中直朱(たなか・なおみ)  
アニメ、コミック系の様相でありながら、工夫を凝らしたマチエールは大変繊細で、独特の説得力となっているように思います。伝わってくるテーマにやや不明な点はあるものの、ナイーブさと奔放さの混じり合い方が現代的です。
   
まるやまあさみ  
刺繍によるこの絵の存在感は、有無を言わせず引き込まれます。魂が持って行かれるような(笑)気もしないでもない。手前勝手ではありますが、テーマを庶民感覚だけでなく、他にも広げられないでしょうか。
   

鈴木成一さん総評

絵というのは誰にも邪魔しようのない自由なんだと、どういうわけか今回は思いました。イラストレーションというカテゴリーはあれど、底なしの多様性を垣間見た気がします。ただその自由が新たに共有できるかどうかが唯一選考基準です。イラストレーションという「私だけの言葉」がどんどん生まれるのを今後とも楽しみにしております。 

鈴木成一さん最終選考 最終選考者…
近藤晃美、石黒万友佳、岡藤真依、イサカナオキ(以上東京都)、丸山一葉(群馬県)、すうひゃん。(宮崎県)

(鈴木さん審査のながれ 一次審査→二次審査→最終選考)

 
長友啓典賞 大坪聖香(おおつぼ・みか)
 
異空間の表現が面白い。一見、可愛いイラストだが、よく見るとコワイものとなってくる。イラストレーションならではの表現だ。
   
長友啓典賞次点  
ハセガワマホ(はせがわ・まほ)  
髪の毛のちょっとしたゆらぎ、髪の毛に手を添えている女子、髪の毛の輝きが今風の女子だ。少女から大人に変わりつつあるエロティシズムが素晴しい。
   
坂西育美(ばんざい・いくみ)  
女の人が一様にするポーズ(男がこのポーズをしたってどうしょうもない)がユーモラスだ。内股になっている(外股ではありえない)足のカタチが可愛い。
   

長友啓典さん総評

レベルの高い選考会だった。正直、応募点数1504点を数回にわたって見ていくのだが、三分の一に絞るのに苦労した。面白いイラストレーションが沢山あり、その中から1点の選出は相当キツイものがあった。

長友啓典さん最終選考 最終選考者…
竹中ゆみ子、毛塚隼人、ほりはたまお、石川耕平(以上東京都)、鴇田みよこ(神奈川県)、KINUE、小山萌江、永井久美(埼玉県)、加藤正臣(千葉県)、津田由佳梨(北海道)、関川航平(宮城県)、小原さおり、上山拓次(以上愛知県)、CHIHRO(大阪府)

(長友さん審査のながれ 一次審査→二次審査→三次審査→最終選考)

 
水野健一郎賞 立山柚子(たてやま・ゆうこ)
 
僕がすっかり忘れてしまっていた気持ちを思い出させてくれる不思議な絵です。既視感に満ち溢れるキャラクターとタッチ。しかもそれを描いた人が25歳。その一周したダサかっこよさには少なからず嫉妬しました。アニメーションになって動き回る様子も目に浮かびます。
   
水野健一郎賞次点  
瓜生太郎(うりゅう・たろう)  
こんな言い方は失礼かもしれませんが、気がついたら残ってました。いや、視界の端っこにずっといるのは感じてました。しかしその存在はあまりにもニュートラルかつ自然すぎたのです。いつしか審査会場のインテリアと化し、僕の消去法を見事にすり抜け、そこに無いと不自然な存在になってしまっていたのです!審査の後に親しみを込めてビール片手に話しかけてみましたが、一言も返ってきませんでした。奇妙な作品です。より軽やかに、よりファッショナブルに、物質感をどんどん排除していってほしいですね。この先どこに到達するのか楽しみです。
   
大場ケンイチ(おおば・けんいち)  
複数の人物がいる風景がとても素敵です。小さい人物の記号化されてないデフォルメにぐっときました。ダンボールの使い方が上手いですが、それは僕にとって全く重要ではなく、むしろ別の画材(油絵の具など)で描かれたものも見てみたいです。大場さんの絵も動かしたい(激しく振動させたい)と思いました。
   
 

水野健一郎さん総評

たくさんの絵と対話しました。目をつむるといろんな顔がよみがえってきます。
審査を振り返ってみましょう。
まず僕は悔しいと感じる作品を選ぼうという心づもりで挑みました。その感覚が一番信用できると同時に、それが僕に与えられた役割だと判断したからです。しかし、当然ながらそんなに簡単なものではありませんでした。審査を始めてすぐに、僕の感情は愛おしさでいっぱいになりました。愛おしさとは、生真面目な稚拙さだったり太眉だったりぷっくりほっぺだったり不細工だったり美人だったり顔が緑色だったり真顔だったり小顔すぎだったり描きかけだったりマイケルジャクソンだったり、要するに僕の琴線に触れる要素(による心の動き)のことです。
しかし愛おしスイッチを全てオンにするわけにはいきません。なぜなら3人しか選べないからです。そこで、僕が選ばなくても大丈夫な作品は外させていただきました。「愛おしさ」以外に「保留」な作品も多く存在しました。それは僕の好みではないのに何故か気になる作品等です。
一次審査を終えた時点で50人ほど残りました。
そしてさらに30人ほどに絞り込みました。
さて、問題はそこからです。さんざん悩んだあげく、無自覚な(無自覚だと思われる)作品から外させていただきました。その判断が正しかったかどうかはわかりません。「愛おしさ」の最重要ポイントである「生真面目な稚拙さ」を持った作品が2〜3点に減ってしまいました。僕が知っている作品に似ているものも外させていただきました。同一人物だったらごめんなさい。
残りは11人になりました。そこからは僕の意識に作品同士のバランスが大きく影響してきました。それは主に色だったりタッチだったり、バランス良く上品な組み合わせを考え始めたのです。そして上品さに欠けると感じた作品から外されていきました。ペーターズだからという気持ちが少なからず作用したのかもしれません。
何はともあれそうして3人を選出することができました。審査に要した時間は休憩時間を含め約7時間です。
余談ですが、バランスの問題(あるいは上品さの問題)で外さざるを得なかった中から3人選び、勝手に裏水野健一郎賞を決めました。そのメンバーでのグループ展もいつか開催できたらいいなあと思いました。

水野健一郎さん最終選考 最終選考者…早川世詩男、鈴木孝典、岡田喜之、藤田恵、大塚文香、まるやまあさみ、平野志奈、SHIKI 、平山晴隆、山路奈央子、真々田ことり(以上東京都)、町田ひろみ、mur、正一、名取あき、野本千洋、渡邉正伸(神奈川県)、古田誠、小山萌江、山本卓実(以上埼玉県)、加藤麻衣、加藤正臣(以上千葉県)、黒崎威一郎(栃木県)和田彩、石沢順也(茨城県)、高野加菜(山形県)、竹内遥世(長野県)、前田登志春(大阪府)、秦直也(兵庫県)、大沢浩一、新山太郎(福岡県) 

(水野さん審査のながれ 一次審査→最終 選考)

PATER'S Gallery COMPETITION 2014年度受賞者展
2015年2月6日(金) - 2月18日(水) 開催予定
ペーターズギャラリー 12:00〜19:00 木曜日定休
受賞作品の展示と、各審査員賞に選ばれた4名はあらたに描き下ろした作品も展示します。




© shiori matsuura

ペーターズギャラリーコンペ2014 作品募集要項

審査員

網中いづる(イラストレーター)
鈴木成一(グラフィックデザイナー)
長友啓典(アートディレクター)
水野健一郎(アーティスト)
【敬称略・五十音順】

応募作品の中から4人の審査員が各々上位3名を選出し、賞を決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行います。(2015年2月中旬予定)
受付期間 2014年6月7日(土)〜6月18日(水)12:00〜19:00 木曜定休
※入賞者には7月10日までにご連絡します。
テーマ テーマ「人」。 人物を多く描いたイラストレーター・ペーター佐藤にちなんで、人物を題材にしたイラストレーションを募集します。
作品サイズ等 B3サイズ以下。 画材自由。 点数制限なし。
立体・半立体作品は保管の都合上、写真等でご応募下さい。
※折曲がりやすい作品は厚紙などの台紙に貼り、傷つきやすい作品の表面は透明のフィルム(アセテートフィルム等)をかけてください。 トレペ不可。 額装不可。
出品料

2点まで3,000円、3点目からは1点につき1,000円 (例:5点応募の場合、計6,000円)、郵送搬入の方は無記名の定額小為替証書もしくは普通為替(郵便局で購入可能)で作品と共にお送りください。
直接搬入の方はギャラリー受付にて現金でお支払いください。 
※応募者の都合による出品料の返金は致しません。

搬入搬出 上記の受付期間中に作品を、ペーターズギャラリーに直接搬入または搬送して下さい。郵送返却の方は返送先を記入した「着払い宅配伝票貼付の返送用封筒」または「切手貼付の返送用封筒」を同封して下さい。 直接搬出の方は7月20日〜7月31日(12:00〜19:00/木定休) の間に取りに来てください。
※搬出期間を過ぎた作品はお預かりできません。 搬出日に来られない方は必ずご連絡ください。
※作品の扱いには十分気をつけますが、万一破損・紛失した場合はご容赦願います。
応募先/お問合せ ペーターズショップ アンド ギャラリー
〒150-0001東京都渋谷区神宮前2-31-18
12:00〜19:00/木曜定休(ただし受付期間中の木曜日はオープン) 
Tel:03(3475)4947
Fax:03(3408)5127
mail:patersato@paters.co.jp
応募用紙はコチラをプリントアウトしてご利用ください。

■審査員プロフィール

網中いづる(あみなか・いづる)

イラストレーター。
アパレル会社勤務を経て02年に独立。書籍、雑誌、広告、パッケージ等で活動。装画「その人、独身?」シリーズ/酒井順子著ほか、絵本「赤いくつ」角田光代・文など。afternoon teaクリスマスパッケージ、Loftキャンペーンポスター。99年ペーター賞。03年TIS公募大賞。07年講談社出版文化賞さしえ賞。TIS会員。

「私自身、15年前にペーター賞を受賞したことがフリーランスに転向する大きなきっかけになりました。 どうぞよろしくお願いします。」

 
鈴木成一(すずき・せいいち)

グラフィックデザイナー。
1962年北海道生まれ。筑波大学芸術研究科修士課程中退後、1985年よりフリーに。1992年(有)鈴木成一デザイン室設立。1994年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。エディトリアルデザインを主として現在に至る。
「鈴木成一装丁イラストレーション塾」講師、筑波大学芸術研究科非常勤講師。
著書に『装丁を語る。』(イースト・プレス刊)。近刊に『デザイン室』(イースト・プレス刊行予定)。

「新しい才能の発見に期待します。」

 
長友啓典(ながとも・けいすけ) アートディレクター
61年桑澤デザイン研究所卒業、日本デザインセンター入社。69年黒田征太郎とK2設立。84年講談社出版文化賞 【さしえ賞】、06年第37回講談社出版文化賞【ブックデザイン賞】受賞。エディトリアル、広告等のアートディレクションを手がける他多数の小説や雑誌に挿絵、エッセイを連載。
日本工学院専門学校グラフィックデザイン科顧問
東京造形大学客員教授
 
水野健一郎(みずの・けんいちろう) アーティスト
1967年岐阜県生まれ。鳥取大学工学部社会開発システム工学科中退。セツ・モードセミナー卒業。既視感と未視感の狭間にゆれるロマンチシズムを求めて自身の原風景であるテレビアニメの世界観を脳内で再構築し、多様な手法でアウトプット。
作品集『Funny Crash』、『KATHY's "New Dimension"』をTOKYO CULTUART by BEAMSより 刊行。2013年より、美学校「絵と美と画と術」講師、東北芸術工科大学映像学科アニメーションラボ非常勤講師。

「とても楽しみです。」


■ ペーターズギャラリーコンペ受賞者を訪ねて
過去のコンペ受賞者の活動をご紹介しています。

 
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